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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

青黒く空の色を沈めて横たわる小さな刃……それが血を夢みて心から微笑んでいるようだ。

「なあに伊織さん、あの二人だって、あれだけおどかしときゃアたくさんでさあ。へっへっへ、みんな肝をつぶして突っぷしゃがったっけ」

いいながら豆太郎、手の小剣を鼻さきにかざして、しかめッ面で刃をにらんだが、まだ気に入らないとみえて、

「チッ! こいつめ!」

またゴシゴシ磨石にかけ出したが、あの二人と聞いて、弥生が急にもの思いにあらぬ方を見やったとたん、

「伊織どの! 伊織殿! 伊織殿はおられぬかな?」

奥から、老翁の声が流れてきた。

「そうさ。乾雲一味の者は大分たおしたようだから、まずあれで上出来であった……あの紅絵売りの若侍と乞食とはああして威嚇するだけでよいのだ、怪我があってはならぬ」

起きあがりながら、こうそそくさと弥生がいうと、豆太郎はちょっと不審げな顔を傾けて、

「へえい! そういうことになりますかね。なんだか俺チにゃあわからねえ」

で、弥生がまた、なにか口にしようとしているところへ、さっきから呼びつづけていた老人の声が、こんどはひときわ甲高に聞こえてきた。

「伊織どの! そこらに伊織殿はおらぬかな?」