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ここのつのかぎ

九つの鍵

野村 胡堂

「少年時代」1949(昭和24)年1月~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,349 字 · 42 页

青空文庫

妹の愛子も一つ持っているし、ぼくの身の廻りにも一つ隠されているはずです。いや、それどころではなく、ここにいる植野誠一君――照国の誠ちゃんの身辺にも、一つの鍵が隠されているに違いないのです」

「――――」

それは実に奇ッ怪な話ですが、千万人に優れた智恵者の狩屋三右衛門が、精一杯の智恵を絞って、九つの鍵を隠したとしたら、それは実に凡人の凡慮ではどうすることもできないに違いありません。

「九つの鍵は九人の身辺に、その当人も知らない方法で隠されました。愛子のハンドバッグや、ぼくのシースなどではなく、もっともっと不思議な場所に、きわめて不思議な方法で隠されているに違いない」

「――――」

三人は思わず顔を見合せました。それは余りにも奇ッ怪な話です。

「こう言っただけでは信用しないかも知れない、が、悪者共は早くも、予備の九つの鍵がどこかに隠されてあることを知って、妹を誘拐したり、この家を探し抜いたり、いろいろの事をたくらんでいる。こうなると一歩の立ち遅れは、千里の開きだ。巨億の富が悪者共の手に落ちてその遊蕩とぜいたくのために費われたら、戦後インフレに悩む日本にとってはゆゆしき大事だ。