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くだん

九段

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第二〇号」1951(昭和26)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,870 字 · 20 页

青空文庫

役者が芝居している頭の上からウマイゾ/\と声援したです。若年のみぎりスポーツできたえたせいか、どんなに酔っても足がふらつくことがないので、落ちて死ななかったのは幸せだった。その時以来浅草に勇名なりとどろき、私の酒の酔いッぷりに例をとって小安吾、中安吾、大安吾という言葉が行われたそうであった。つまり誰かが酔っ払って御婦人に礼をつくしはじめると、そろそろ中安吾になりやがったな、というグアイであったそうだ。十年前の話である。

ちかごろ旋風を起す数は減ったけれども、時々大安吾になるのは、治らない。モミヂ宿泊中とてもそうで、フッと大安吾になったが最後、風となってどこへ消えたか、誰にも分らない。私自身も翌日目がさめるまでは、どこにいるのか分らぬのである。というのは、モミヂを出発する時から前後不覚に泥酔しているからである。サンダルを突ッかけて、ちょッと買い物の途中から、気が変って行方不明になることもある。

さてその日はユカタに下駄ばきでいずれへか立ち去った。人の話をしているようだが、どうもこの時は仕方がない。ふだんはそんなに酔うことがないのだが、この日は日中から来客があって泥酔したのである。