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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

早口にならべたてるのを、にこにこ笑いながらお母さんは聞いていたが、やがて、幼い子どもでもたしなめるようにいった。

「まるで、なんもかもひとのせいのようにいう子だよ、おまえは。すきできてもらった婿どのでないか。お母さんこそ、文句いいたかったのに、あのとき。わたしの二の舞いふんだらどうしょうと思って。でも、久子が気に入りの人なら仕方がないとあきらめた。それを、なんじゃ、今さら」

「すきと船乗りはべつよ。とにかくわたし、先生はもういやですからね」

「ま、すきにしなされ。今は気が立ってるんだから」

「気なんか立っていないわ」

学校でとはだいぶちがう先生である。しかしそのわがままないいかたのなかには、人の命をいとおしむ気持があふれていた。

やがておちついてふたたび学校へかようようにはなったが、新学期のふたをあけると大石先生はもう送りだされる人であった。惜しんだりうらやましがる同僚もいたが、とくに引きとめようとしないのは、大石先生のことがなんとなく目立ち、問題になってもいたからだ。それなら、どこに問題があるかときかれたら、だれひとりはっきりいえはしなかった。大石先生自身はもちろん知らなかった。