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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

いんま、富士子さんらも芸者ぐらいに売られにゃよかろがって――」

じぶんとこの運賃、半分は売れのこりの道具ではらったことまでしゃべりつづける小ツルの肩をかるくたたいて、

「小ツルさん、あんたはね、いらんことを、すこし、しゃべりすぎない? あんた産婆さんになるんでしょ。いい産婆さんは、あんまり人のことをいわないほうが、いいことよ、きっと。これね、先生のせんべつのことば。いい産婆さんになってね」

さすがに小ツルはちょこんと肩をすくめ、

「はい、わかりました」

三日月の目で笑った。

「早苗さんも、いい先生になってね。早苗さんはもっと、おしゃべりのほうがいいな。これも先生のおせんべつ」

肩をたたくと、早苗はこっくりしてだまって笑った。

「コトやんにあったら、よろしくいってね。からだ大事にして、いい嫁さんになりなさいって。これおせんべつだって」

小ツルはすかさず、

「先生も、よいお母さんになりますように、これおせんべつです」

ふざけて先生の肩をたたいた。小ツルはもうほとんど先生と同じ背の高さになっていた。

「はい、ありがとう」

思いきり声をあげて笑った。

高等科になって、はじめて男女別組になった教室には、正たちはいなかった。