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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
小林先生も、今日は分教場にいる子どもたちに、別れのあいさつにゆくところなのであろう。
「先生、こんどくる先生は?」
「さあ、もうそろそろ見えるでしょう」
「こんどの先生、どんな先生?」
「しらんのよ、まだ」
「また女学校出え出え?」
「さあ、ほんとにしらんの。でもみんな、性わるしたら、だめよ」
そういって小林先生は笑った。先生もはじめの一年は途中の道でひどく困らされて、生徒の前もかまわず泣いたこともあった。泣かした生徒はもうここにはいないけれど、ここにいる子の兄や姉である。若いのと、なれないのとで、岬へくるたいていの女先生が、一度は泣かされるのを、本校通いの子どもらは伝説として知っていた。四年もいた小林先生のあとなので、子どもたちの好奇心はわくわくしていた。小林先生と別れてからも、みんなはまた、こんどくる先生の姿を前方に期待しながら、作戦をこらした。
「芋女ォって、どなるか」
「芋女でなかったら、どうする」
「芋女に、きまっとると思うがな」
口ぐちに芋女芋女といっているのは、この地方がさつま芋の本場であり、その芋畑のまん中にある女学校なので、こんないたずらな呼びかたも生まれたわけだ。