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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「うちのマツは昼飯はたべにもどったがいな。箸おいて、用ありげに立っていって、すぐもどるかと思や、もどってきやせん」
コトエのおばんはきゅうに心配になってきた。もうぞうりどころでなかった。大工のおかみさんが、さがしてくるといって帰ったあとも、心配はだんだんひろがってくるばかりだった。出たり入ったり、立ったり坐ったり、おちつかなかった。
――無理もない。あそびたいさかりじゃもん。毎日子守りばっかりじゃあ、謀反もおこしたかろう……
ぽとんと涙が落ちた。その涙でかすんだ目に、小さいときから子守りばかりさせたためか、出っ尻になってしまった幼いコトエのかわいそうな姿が浮かんできて消えなかった。
――それにしても、どこで、なにをしているのかしらん。今日は若いもんまでがおそいなあ……
外に出て沖をながめた。鰺漁に出ているコトエの両親たちの帰りまでが、今日はとくべつおそいように、おばんには思えた。
「まだ、もどってこんかえ」
大工のおかみさんの三度目の声がかかるまでに、小ツルの姉と、早苗の弟と、富士子の母親とが、めいめいの家の娘をあんじてみにきた。まもなく一年生の全部がいないとわかり、やがて本校帰りの生徒のひとりが、八幡堂という文房具屋のそばでみんなを見かけたというのをきいて、やっと心配は半分になった。