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ひとでなしのこい
人でなしの恋
江戸川 乱歩
「サンデー毎日」大阪毎日新聞社、1926(大正15)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,245 字 · 33 页
四
この事柄に何か意味がありはしないか。私はふとそこへ気がついたのでございました。
四
土蔵の二階で書見をするというのは少し風変りと申せ、別段とがむべきことでもなく、何の怪しい訳もない、と一応はそう思うのですけれど、又考え直せば、私としましては、出来るだけ気を配って、門野の一挙一動を監視もし、あの人の持物なども検べましたのに、何の変った所もなく、それで、一方ではあの抜けがらの愛情、うつろの目、そして時には私の存在をすら忘れたかと見える物思いでございましょう。もう蔵の二階を疑いでもする外には、何のてだても残っていないのでございます。それに妙なのは、あの人が蔵へ行きますのが、極って夜更けなことで、時には隣に寝ています私の寝息を窺う様にして、こっそりと床の中を抜け出して、御小用にでもいらっしったのかと思っていますと、そのまま長い間帰っていらっしゃらない。縁側に出て見れば、土蔵の窓から、ぼんやりとあかりがついているのでございます。何となく凄い様な、いうにいわれない感じに打たれることが屡々なのでございます。土蔵だけは、お嫁入りの当時、一巡中を見せて貰いましたのと時候の変り目に一二度入ったばかりで、たとえ、そこへ門野がとじ籠っていましても、まさか、蔵の中に私をうとうとしくする原因がひそんでいようとも考えられませんので、別段