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ひとでなしのこい
人でなしの恋
江戸川 乱歩
「サンデー毎日」大阪毎日新聞社、1926(大正15)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,245 字 · 33 页
ます。もしや何かの生霊が、門野に魅入っているのではないでしょうか。生来憂鬱で、どことなく普通の人と違った所のある、蛇を思わせる様な門野には(それ故に又、私はあれほども、あの人に魅せられていたのかも知れません)そうした、生霊という様な、異形のものが、魅入り易いのではありますまいか。などと考えますと、はては、門野自身が、何かこう魔性のものにさえ見え出して、何とも形容の出来ない、変な気持になって参るのでございます。一そのこと、里へ帰って、一伍一什を話そうか、それとも、門野の親御さま達に、このことをお知らせしようか、私は余りの怖わさ不気味さに幾度かそれを決心しかけたのですけれど、でも、まるで雲を掴む様な、怪談めいた事柄を、うかつにいい出しては頭から笑われそうで、却て恥をかく様なことがあってはならぬと、娘心にもヤッと堪えて、一日二日と、その決心を延ばしていたのでございます。考えて見ますと、その時分から、私は随分きかん坊でもあったのでございますわね。
そして、ある晩のことでございました。私はふと妙なことに気づいたのでございます。それは、蔵の二階で、門野達のいつものおう瀬が済みまして、門野がいざ二階を下りるという時に、パタンと軽く、何かの蓋のしまる音がして、それから、カチカチと錠前でも卸すらしい気勢がしたのでございます