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ひとでなしのこい
人でなしの恋
江戸川 乱歩
「サンデー毎日」大阪毎日新聞社、1926(大正15)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,245 字 · 33 页
これは後になって、二三の方から伺ったことを、寄せ集めて、想像しているのでございますが、門野は生れながらに夢見勝ちな、不思議な性癖を持っていて、人間の女を恋する前に、ふとしたことから、長持の中の人形を発見して、それの持つ強い魅力に魂を奪われてしまったのでございましょう。あの人は、ずっと最初から、蔵の中で本なぞ読んではいなかったのでございます。ある方から伺いますと、人間が人形とか仏像とかに恋したためしは、昔から決して少くはないと申します。不幸にも私の夫がそうした男で、更に不幸なことには、その夫の家に偶然稀代の名作人形が保存されていたのでございます。
人でなしの恋、この世の外の恋でございます。その様な恋をするものは、一方では、生きた人間では味わうことの出来ない、悪夢の様な、或は又お伽噺の様な、不思議な歓楽に魂をしびらせながら、しかし又一方では、絶え間なき罪の苛責に責められて、どうかしてその地獄を逃れたいと、あせりもがくのでございます。門野が、私を娶ったのも、無我夢中に私を愛しようと努めたのも、皆そのはかない苦悶の跡に過ぎぬのではございませんか。そう思えば、あの睦言の「京子に済まぬ云々」