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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

小栗虫太郎『人外魔境』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人外魔境、人外魔境、人外魔境、人外魔境。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,713 字 · 205 页

青空文庫

「ふむ、いかさますみ申したようであるが」

裸足の、二人の式部官が次第書とつき合せてみると、もうお客はこれで終っている。きょうの御儀に日本綿布の外衣をそろえた、儀仗兵も休ませなくてはならない。さあ、腹も減ったし、羊も焼けている。胡椒飯を腹さんざん詰めこもうではないか――となった時。

とつぜん、昇降階のしたでザザザザという太鼓の音。お客だ、と一同は慌てふためいて列をそろえた。とそこへ、たくみにガウンを捌いてくるたけた一人の婦人。みれば、頭上には王冠を戴いている。

「失礼でございますが」

と、式部官の一人が恭々しく訊ねたのである。

「次第書にございませんので、お言葉を願います。いずれの国の、どなた様でいられましょう」

「キンメリアの女王」

「へっ」

「このオーマンは、なんという無礼な国である」

とその婦人が凜然と言い出した。

「わたくしは、前もって儀式書を頂いている。それには、使節の随員は宮廷よりの馬車に分乗し、使節の馬車に前行すべし――とありますが、随員のはおろか、わたくしのも参りませぬ。当国は格式を重んじ典礼を尊ぶ点に於いて、回教国一と聴いておりますが」

「恐れいります」