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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

小栗虫太郎『人外魔境』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人外魔境、人外魔境、人外魔境、人外魔境。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,713 字 · 205 页

青空文庫

そうして、ここに地底の旅がはじまった。

「いい陽気だ」

と、折竹は口笛を吹きながら、

「暑からず、寒からず……。まことに、当今は凌ぎようなりまして――だ」

しかし、進むというが、蝸牛の旅である。一日、計ってみると、三マイル弱。まだパラギル山のしたあたりの位置らしい。それに、開口のしたあたりでは仄のりと匂っていた、石油ガスの臭いがまったく今はない。

「どうも風邪を引いたのかな」

とセルカークが気になったように、言いだした。

「折竹君、ガスのにおいが全然ないと思うが……」

「そうらしい。たといあるにしろ、小ぽけなやつだろう。採油など、覚束ないようなね」

「ふむ」

とセルカークは不機嫌らしく黙ってしまった。当がはずれたのではないかと思うが、先があること。まだまだというように気をとり直すセルカークを見て、折竹はなんて奴だと思うのだ。すると、その辺から携帯水が気遣われてきた。

とめどない、渇というような事はまだないのであるが、なにしろ、少量しか飲めないので胃は岩石のように重く、からから渇いた食道の不快さに、前途がようやく気遣われてきた。と、その暗道がとつぜん尽きたのである。