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じんせいろんノート
人生論ノート
三木 清
下記以外「文學界」文藝春秋社、1938(昭和13)年6月~1941(昭和16)年10月<br>個性について「哲學研究 第五十二號 第五卷 第七册」京都哲學會、寶文館、1920(大正9)年7月1日<br>後記「人生論ノート」創元社、1941(昭和16)年8月11日<br>旅について 不詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 页
もとより彼は不確実なもののために働くのではない。――「ひとは不確実なもののために働く」、とパスカルは書いている。けれども正確にいうと、ひとは不確実なもののために働くのでなく、むしろ不確実なものから働くのである。人生がただ動くことでなくて作ることであり、単なる存在でなくて形成作用であり、またそうでなければならぬ所以である。そしてひとは不確実なものから働くというところから、あらゆる形成作用の根柢に賭があるといわれ得る。
独断に対する懐疑の力と無力とは、情念に対する知性の力と無力とである。独断は、それが一つの賭である場合にのみ、知性的であり得る。情念はつねにただ単に肯定的であり、独断の多くは情念に基いている。
多くの懐疑家は外見に現われるほど懐疑家ではない。また多くの独断家は外見に現われるほど独断家ではない。
ひとは時として他に対する虚栄から懐疑的になるが、更により多く他に対する虚栄のために独断的になる。そしてそれは他面、人間において政治的欲望即ち他に対する支配の欲望が普遍的であることを示すと共に、彼においてまた教育的欲望が普遍的であることを示している。