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じんぞうにんげんじけん

人造人間事件

海野 十三

「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,654 字 · 30 页

青空文庫

「ハハア――すると、どんな信号音を送ってやれば、どんな風に動くかという人造人間操縦信号簿といったようなものがなければならぬ。さあ皆さん。その辺を探してみて下さい」

「よオし、人造人間操縦信号薄か。――」

そこで係官の指揮で、刑事たちは一勢に部屋の中を宝捜しのように匍いまわった。

「あッ、これじゃないかなア」

一人の刑事が、機械戸棚と後の壁との間に落ちこんでいる一冊の薄い帳面をみつけて摘みだした。

その帳面の表紙には「ロボットQ型8号の暗号表」と認めてあった。

「うむ、Q型8号とは、この人造人間ですよ。ホラ、その鉄枠の上にペンキで書いてある」

係官は、その暗号表を引張りあいながら覗きこんだ。

「ほうほう、荒天――首ヲ左ニ曲ゲル。魚雷――首ヲ前後ニ振ル。なるほど、いろんな暗号が書いてあるぞ。偵察――『時間ガ来タ』ト発言スル。滑走――膝ヲ折ル。……これでみると、人造人間を動かす号令は、短かい単語ばかりだ」

「これを見ると、号令単語は四、五十もありますね」

「オヤ、これはおかしい。どうも変だと思ったら、暗号表が一枚、ひき破られているよ。うむ、これは重大な発見だ。おい皆、破れた暗号表の一枚を探してみろ」