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ものをこわすのがしょうばいじけん
什器破壊業事件
海野 十三
「大洋」1939(昭和14)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页
その夜のうちに、光枝は廊下のうえにコーヒー茶碗をおとして、がちゃんと割った。それが開業式だった。早速その夜のうちにこの仕事を始めておかなければ、その次の日になってやりだすには、ちとやりにくいだろうと思い、ともかくも一発だけはその夜のうちにやっておくことに決心したからであった。
がちゃんと、たいへんな音がして、コーヒー茶碗の皿がたくさんの小片に分れて、あたりに飛びちった。茶碗の方は、小憎らしくも、把手が折れたばかりだった。
「な、な、な、なにをしおった?」と、居間から旦那様の叫喚! つづいて廊下をずしんずしんと旦那様の巨躯がこっちへ転がってくる気配がした。反対の方からは、雇人の一隊が、それというので駆けつける。これは茶碗が破れた音に愕いたというよりも、旦那様の怒声に対応して駆けつけたのであった。
「うううう、なんだギンヤがやったのか」
ギンヤ――というのは、銀やと書くべきか銀弥と書くべきか、よくわからないが、ともかくもこれがこの邸における風間光枝の源氏名であった。――旦那様は、呶鳴りつけるつもりだったらしいが、新任の楚々たるモダン小間使のやったことと分ると、くるしそうにえへんえへんと咳ばらいをして、早々奥へひきあげていった。