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ものをこわすのがしょうばいじけん
什器破壊業事件
海野 十三
「大洋」1939(昭和14)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页
だが、彫を感心しているばかりでは仕方がない。なにかこの額に関して秘密があるのである。それはなんの秘密であろうか。
「ああ、もしかすると……」そのとき光枝の頭に閃いたのは、この部厚い一枚彫の陽明門が、じつは一枚彫ではなくて、陽明門のあたりだけが、ぽっくり嵌めこみになっているのではあるまいか。そしてそれを外すと、この額が実は一つの箱になっている。つまり秘密の隠し箱である。
「きっと、そうかもしれないわ」光枝はそれをたしかめるために、つと手を額の方に伸ばした。そのとたんであった。彼女の背後にえへんと大きな咳払いが聞えた。
(失敗った!)と思ったが、もう遅い。あの咳払いは、旦那様だ。
意外なる収穫
「ギンヤ、そこでなにをしているのじゃ」
「はい。この額がすこし曲って居りますので」
「なに、曲っていたか。はっはっはっ、曲っていてもいい。そのままにしておけ」
「でも、すぐでございますから」
「いや、手をふれることならん。すこしの曲りを直すつもりで、とたんに下に落されて、額がめちゃめちゃに壊れてしまっては大損じゃからな。わしはもういい加減懲りとるでな」
「どうもすみません」