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〔ふ〕ゆいぶつろんけんきゅうについて(とさかじゅんしゅき)
〔付〕唯物論研究に就て(戸坂潤手記)
戸坂 潤
「思想月報 第九号」司法省刑事局、1935(昭和10)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,123 字 · 18 页
併しだからと云って吾々唯物論研究家が各自の研究を政治的実践に結びつけねばならぬという必然性を一向有たないことは理の当然である。そればかりではなく、実際問題から言っても、吾々の一人一人はそれぞれの家族を擁しているところの一市民であり、この生活条件が吾々の研究の基礎的条件となっている。だから吾々が研究目的を実際に果すためには、言葉の十全な意味に於て市民権を完全に保証されねばならぬ。ここに吾々の研究の「政治的」限界が横たわるのである。かくて吾々の研究には学問研究の一般社会条件が不備なる他に以上の如きに類する政治的な限界が他にまだ多々あるのである。吾々の多くは自由主義的意識の所有者であり、従って一般に研究の自由に就いては断然たる要求を有つものではあるが、併し右に述べた政治的限界に就いては之を承認せざるを得ないものである。要するに吾々は幾多の誤解に曝されつつ、生活を脅かされつつ、而も窮屈、困難、不自由なる唯物論研究の為に一生を捧げる決心を有つものに過ぎないのである。何故にそれほど困難を敢てして尚お唯物論の研究は必要であるか。他でもない。ギリシャの昔から哲学は帰するところ、観念論と唯物論との二派に分れるのであるが、処が今日世間の抱く興味は殆んど尽く観念論の側に傾いていて、唯物論固有の真理は著しく無視・誤解されている