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さくひんのテーマとじんせいのテーマ

作品のテーマと人生のテーマ

宮本 百合子

「早稲田大学新聞」1936(昭和11)年9月30日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,492 字 · 7 页

青空文庫

感化院の生活を強いられている少年が、そこにいたたまらず脱走しようとする。そして、やっと逃げ出すとすぐ警察でつかまる。すぐ、事務的にもとの感化院へ送りかえされる。そこで待っているのは、きびしい懲罰であろう。「新しき塩」の中に語られているように、全員に対してお八つぬきが行われ、その憤懣が、はけどころを求めて、脱走した少年を半殺しにするようなこともあるかも知れぬ。しかも、少年らは、逃げる、逃げようと欲している。感化され、馴致されることに、常に反撥している。その心持はどこから来るのであろうか。

私は、自分が、狭い、臭い格子のうちで五ヵ月、半年と暮した間に、何人かそのような、言葉をかけてその心持をきいて見たい少年らの姿を見たのである。

そもそも、現在の感化院というのは、いかなる人間的生活を目標において、不幸な、性格の弱い、均衡の失われた少年らを、感化してゆこうというのであろうか。答えは、比較的簡単に、かつ明瞭に、出されているのであろうと思う。人格のある、勤労をこのむ市民に養い育てるのが当院の目的であると。この答えに対して、少年らの胸中には、おのずから別な訴えと自棄とが活きて、羽ばたいて、彼らを、脱走へそそり立てるのではないだろうか。