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ふしゅう

俘囚

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,938 字 · 31 页

青空文庫

「痛みが無くても、腕も脚も切ってしまったのネ。ひどいひと! 悪魔! 畜生!」

「切ったところもあるが、殖えているところもあるぜ。ひッひッひッ」

殖えたところ? 夫の不思議な言葉に、あたしはまた身慄いをした。あたしをどうするつもりだろう。

「いま見せてやる。ホラ、この鏡で、お前の顔をよく見ろ!」

パッと懐中電灯が、顔の正面から、照りつけた。そしてその前に差し出された鏡の中。――あたしは、その中に、見るべからざるものを見てしまった。

「イヤ、イヤ、イヤ、よして下さい。鏡を向うへやって……」

「ふッふッふッ。気に入ったと見えるネ。顔の真中に殖えたもう一つの鼻は、そりゃあの男のだよ。それから、鎧戸のようになった二重の唇は、それもあの男のだよ。みんなお前の好きなものばかりだ。お礼を云ってもらいたいものだナ、ひッひッひッ」

「どうして殺さないんです。殺された方がましだ。……サア殺して!」

「待て待て。そうムザムザ殺すわけにはゆかないよ。さア、もっと横に寝ているのだ。いま流動食を飲ませてやるぞ。これからは、三度三度、おれが手をとって食事をさせてやる」

「誰が飲むもんですか」