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ほくろてんのう
保久呂天皇
「群像 第九巻第七号」1954(昭和29)年6月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,034 字 · 27 页
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中平がクマに用いるタマをこめた二連発銃をぶらさげて戸別訪問を開始したので、部落は大恐慌となった。彼は家ごとに徹底的な家宅捜査を強要したのである。それを拒むことはできなかった。五尺八寸五分の大男であるし、昨今は目ツキも人相も変っている。一発ズドンと見舞われてはたまらないから、タタミまであげて見せないわけにいかない。
家宅捜査は保久呂湯からはじまって全戸に及んだが、一度ではすまなかった。盗品を発見するまで何百ぺんでもくりかえすと彼は宣言したのである。宣言通り実行した。中平は部落の誰かが犯人だと確信していた。都会とちがって盗んだ金をすぐ使うことができないから、大方畑か山林へ埋めているかも知れない。使うヒマがないうちに取り返すつもりなのだ。部落から里へ降りようとする者があると、中平は風のようにリンゴ園から駈け降りて、身体検査をした。クマのタマをこめた二連発を放したことがないから始末がわるい。部落会長の六太郎が総代となって彼を訪ねて、
「部落の者はお前のおかげで仕事にもさしつかえているが、家宅捜査をやめてくれないかね」
「大泥棒が現れたのは部落全体の責任だから、犯人がでるまで協力するのが当り前だ」