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しんぎについて

信義について

宮本 百合子

「東京大学新聞」1946(昭和21)年7月23日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,992 字 · 6 页

青空文庫

現に新聞は共産党への弾圧を挑発するためマ元帥暗殺計画を企てた新井輝成という男の記事を発表している。

当時の中央委員たちによって、スパイとして調べられていた小畑達夫が特異体質のため突然死去したことは、警視庁に全く好都合のデマゴギーの種となった。共産党員は、永い抑圧の歴史の中で沢山の誹謗に耐えて来たのであったが、この事件に関係のあった当時の中央委員たちは、人間として最も耐えがたい、最も心情を傷められる誹謗を蒙った。人殺しとして扱われ、惨虐者として描き出され、法律は、法の無力を証明して支配者の都合に応じて顎で使われ、虚偽の根拠の上に重刑を課した。

私は、一人の妻として計らずもこの事件の公判の傍聴者であり目撃者であった。一九四〇年(昭和十五年)春ごろから非転向の人たちだけの統一公判がはじまった。事件のあった時から足かけ八年目である。

転向を表明した人々の公判が分離して行われ、大泉兼蔵の公判も行われた。当時傍聴席は、司法関係者と特高だけで占められていた。家族として傍聴する者さえ殆どなかった。たまに誰か来ると、特高は威脅的にその人にいろいろ訊いたし、私のように関係の知れ切っている者に対してさえ、今日こそ無事には帰さないぞという風の無言の脅迫をくりかえした。