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びぜんめいきゅうでん

備前名弓伝

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页

青空文庫

……拙者も未熟ながら師範の一人、門人たちの腕がどれほどのものか見ていればおよそ見当はつく、三之丞どのの構えを見るにほとんど天成弓の名手に生れついたと思われるほどだ。あのくらいの矢頃なら百発百中は当然な筈なのに、かつてまだ一矢も的に当てていない。つまりそこだ、三之丞どのは的に射当てる修行をしているのではない、道の極意をさぐろうとしておるのだ。何年先にその道の奥を極めることができるか分らぬが、やがては無双の名人にならるることは間違いない、良い甥御を持たれてお羨ましく存ずる」その道の師範の云うことだし、なるほどと思う節もあるので、そのときは納得したものの、どうも「的に当てない弓の修行」というのがよく分らない、いつか本当の腕を試してやろうと思っていたのである。

弓と矢を持って戻ってきた三之丞、「五年来修行の腕のみせどころだぞ、ぬかるなよ」伯父が念を押すのをうしろに聞きながら、足場を計って弓を構えた。そこから庭はずれの梨の木までおよそ二十六七間、芽をふきはじめた高い梢に鷺はまだじっと翼を休めている。三之丞は弓に矢をつがえ、しばらく呼吸をしずめていたが、やがて位どりをしてきりきりとひき絞った。