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びぜんめいきゅうでん
備前名弓伝
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页
ひき絞った、と思うより疾く、ひょうっと切って放した矢一筋、空を飛んでふっつと梢に止っていた鷺のちょうど脚の下へ突立った、鷺はおどろいてぱっと舞い上った、矢は梢に突立ったままぶるぶると震えている。
「未熟者、なんのざまだ」三左衛門はまっ赤になって怒った。「あればかりの矢頃でおまけに雀や鶯と違い、鷺という大きな鳥を射損ずるなどとは呆れ果てた未熟者、五年のあいだその方はなんの稽古をしていたのか」「……はあ、まことに、なんとも」「まことにもくそもあるか、顔を見るのも癪に障る、これから追っていって今の鳥を射止めてまいれ、それまでは出入りを差止める、わかったか」とうとう癇癪を起こしてしまった。三之丞は別に恥じ入る様子もなく、黙って、自分の家へ帰ったが、その夜のこと、三左衛門が夕食のあとで居間へ入ると、間もなく娘のなつがそっとやってきた。
「父上さまはどう思召すか存じませんが、三之丞さまは本当にお心のやさしいお気質でございますのね」いろいろと話のあった後で、なつがふと思いだしたように云った。――ははあ、昼間叱ったので、またなにか意見をするつもりだな。三左衛門は早くもそう察したが、「三之丞がどうかしたか」