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びぜんめいきゅうでん

備前名弓伝

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页

青空文庫

とそ知らぬ顔で訊いた。

「はい、去年の冬のはじめでございました、赤尾様や田沼様、それから森脇の右門作さまなどが雁射ちにお誘いにみえましたが、どうしても御一緒にいらっしゃいません」「行かないでどうした」「どうして厭だと、右門作さまが押してお訊ねなさいましたら、猟師などが生業として獲るなら是非もないが慰みのために生物の命をとることは生来嫌いだ、拙者は御免を蒙ると仰有いました」「右門作はなんと申した」「慰みとは聞き捨てならぬ、飛ぶ鳥を射止めるのも弓を学ぶ者には修行の一つではないか。右門作さまがそう云いますと、三之丞さまは笑って、……それは各々の好き好き、貴殿にはそれが修行になるであろうが、拙者にはなんの役にも立たぬ。役に立たぬことで殺生するのは厭だから御免を蒙る、そう仰有ってでございました」

三左衛門は黙って腕を組んだ。――これは鷺を射落せと命じたのが誤っていたかも知れぬぞ。そう気がついたので、「なつ、おまえ三之丞の許へまいって、もう鷺を追い廻すには及ばぬ、出入りも差支えないと申してやれ。……どうやらまたおまえに云いくるめられたようだ」と苦笑いをしながら云った。