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ぼくがかわいがるから

僕がかわいがるから

小川 未明

「台湾日日新報」1936(昭和11)年5月22日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,056 字 · 5 页

青空文庫

お母さんは、さっそく、正ちゃんに、そのことをおっしゃいました。

「おまえの好きなものを買ってあげるから、クロをだれかにやっておしまいなさい。」と、おっしゃいました。

すると、正ちゃんは、即座に、

「僕は、なにもほしくないから、クロをやることはいやです。」と、お答えしました。

「上等の二輪車を買ってあげても。」

「二輪車なんか、ほしくありません。」

「いつか、ほしいといったでしょう。」

「それは、ほしいが、クロをやってしまうことはいやです。」

お母さんは、考えていられましたが、正ちゃんが、いつか、野球のミットをほしいといったことを思い出されました。そこで、こんどは、

「ミットも買って、あげるけど。」と、おっしゃいました。

ミットときいて、正ちゃんは、お母さんの顔を見ました。

「ミットも買ってくれるの?」と、お母さんに、ききかえしました。

「ミットも買ってあげます。」

お母さんが、こうお答えなさると、正ちゃんは、頭を振って、

「ミットなんか、ほしくない。」と、いいました。

「じゃ、犬をやめて、伝書ばとになさいな、はとは、やさしくて、そんな悪いいたずらをしませんから。」と、お母さんは、おっしゃいました。