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そう

僧

小川 未明

「新小説」1910(明治43)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,206 字 · 21 页

青空文庫

或は何処かでこの僧は横死を遂げたのでないかと思われた。而して再びこの僧が、この村に入って来るなどとは考えられなかった。

然るに突然十年目でこの僧が托鉢にやって来た。

中にも老夫婦の者は眼を白黒して驚いた。もはや自分等の死ななければならない時が来たのかと悲んだ。二人は、一夜、こういって語り合った。今ではこの村に住んでいる者は、暗い森の中の家と私共と、隣の女房の家ばかりだ。たったこの三軒を当にして、坊さんがこの村に入って来なさるとは合点が行かない。やはり今日来た坊さんは昔来た坊さんだろうかと婆が言った。

既に老耄している爺は、この時ばかり気が確かであった。而して断言した。

「十年前に来た坊さんだ。同じい坊さんだ。」夜は暗く、小舎の軒に迫っていた。耳を傾げて家の中の様子を立聞しているようだ。

「あの時分の坊さんなら、もっと年を取っている筈だ。」と婆がいった。

爺は、少しも変った処がない。身形から、様子から、その時の儘であると語った。

婆さんは悲しんで、次のようなことを小声で物語った。

きっと今度死ぬのは私等でない、あの森の中の家の娘さんだと思う。先頃、一寸見た時に真青な顔をしていた。