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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
そしてとぎれとぎれに女の児の高い声が。私はそれに吸い込まれてすべてを忘れていた。天国的なものを音で描くと、どうしても私にはその時の印象がよみ返って来る。三十年も後に、築地小劇場で「リリオム」を上演した時、ある貧しい天国的なシーンでオルガンが使われたが、私の心は漂渺と昔の小学校の校庭に返っていた。今でもオルガンの音と天国とは私には切りはなせないのだ。
ひとつには鶴子とは現実に逢う機会がまれにしか与えられなかったせいかも知れない。私は他の少女たちには度々遇って遊びつつも、そして彼女たちも美しくなくはないのに、心はいつも鶴子をあこがれていた。彼女は私には何か祀られるものであった。何かを媒介しなくば直かには触れられないような運命のものであった。
「あんたは一体誰れが好きなの?」
後に種子姉が私に訊いた事があった。
「さあ、誰れか知ら」
と私は面を赤らめもしなかった。
「あてて見ようか。渋谷のすみ子さん?」
「う、うん」
「榊原のいち子さん」
「う、うん」
「じゃあ、解った。仁田の鈴子さんでしょう」
「あれも好きだけれど、ほんとうは違うの」
「誰れだろうね。言って御覧なさい」