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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
ピエロが滑稽な真似をすると、彼女はお腹を押えて笑った。
桟敷にはお雛妓など沢山来ていたが、私はすみ子が同じ日本風でも彼女たちとはハッキリ違った型であることを見分けた、すみ子は町娘であった。それには色っぽくても、水稼業に通じるものではなく、家庭に――台所につながるものであった。そう思って私は彼女を可憐な気がした。水稼業の女に私にはあこがれの対象はなかった。
すみ子は芸を見ている最中にも、幾度となく化粧を直した。彼女には芸の巧拙などは付け足りにすぎなかったのだろう。美しい桟敷に咲きこぼれたひとつの花として自分を見出し得ればよかったのであろう。
家に帰ってからも天花のことが胸に残った。ああいう少女と遊べたらと思った。これきり彼女たちは旅立ってしまい、もういつまた彼女を見られるかも知れないのだと思うと、私は淋しく、悲しかった。辛いことだと思った。当分彼女のプロマイドが私の机の側に置いてあった。がその後三十年の今日まで、私はいく度もそのかみの天花を思い出したが、とうとう一度も彼女を見た事はない……。
こうしたわけですみ子とは逢う機会は幾らでもあった。美しいと思い、憎からずも思ったが、あこがれの心が高まらなかったのは、遇い易かったのと、受け身だったせいであろう。