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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

そうは言っても純情なすみ子は揚葉の蝶のようなその厚ぼったい愛の翅で、年少の私の多感の心を掩いつくそうとするような時もあった。

小歌島に桃の咲くころ※では親類や、懇意先や、得意客など招いて花見の宴を張った。私たちは小船を島に乗りつけると、桃林の中に毛布や、茣蓙を敷いて、ひょうたんの酒を汲み交わした。

瀬戸内海の春の濃い螺※の島々を霞に眠らして、人の心もとけ勝ちであった。

児島丸の事務長の福井さんは、元はそれ者だったというその夫人に弾かせて「我もの」などをおどった。伯母や、すみ子の母たちが今日を晴れと弾いたり、歌ったりしたのは勿論だ。男の客たちはそれぞれおハコを出して浮かれ騒いだ。皆酔った。酔うと新地から芸者を呼ばねばおさまらなかった。が姉も、すみ子もこんな時少しも芸が無かった。私も皆にすすめられて沢山飲んだ。

「あんたいけるね」

と福井さんがしきりにすすめた。

「弟にはあまり飲ませないで下さい」

「大丈夫だよ、定さん(従兄)とは違うからな」

定吉兄は真赤に酔って、「風に吹かれているわいな」とお軽のセリフを、いつものおハコを出しながら、上機嫌であった。この人は酔うほど好人物になった。