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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

もがいていると、後ろから背を抑えてくれるものがあった。

「苦しいえ。どうえ」

すみ子の声であった。

「大丈夫。何でもないんです」

と言ったが、頭がぐらぐらした。

「苦しいんじゃんしょう。花陰亭へ行きゃんしょう。誰もおりゃんせん」

すみ子は私を借り切ってある茶屋へ連れて行った。道具が狼藉としてるだけで誰れもいなかった。私はひっそりした部屋に横になった。すみ子は押入れから蒲団を出してかけてくれた。

私はこんな部屋にすみ子と二人きりいるのが気が咎めた。

「もう大丈夫。一寸休めばなおるから」

「冷やしゃんしょうか」

「いや、ありがとう。それ程でもありません」

彼女は行きそうもないので、

「あっちへ行ってよ、おかしいから」

すみ子は淋しそうにした。

「じゃあ、おやすみなさい。後ゆっくりと」

彼女は襖を〆めて去った。

私はうとうととつい睡ってしまった。目をさますとはばかりに行きたくなった。襖をあけるとちゃんとすみ子は坐っていた。私はおどろいた。それからはばかりから出ると、彼女はちゃんと廊下に待っていて手水鉢の水をひしゃくでかけて呉れた。そして手拭がひどく汚れているのを見ると自分の桃色のハンケチで私の両手を蔽うてしまった。