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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

「あたしは鶏小屋の掃除やら、お洗濯やら、いそがしいのよ」

私は安子と遊びたくても、いつも用事が引っかかるので物足りなかったが、しかし段々と自分がぶらぶらしてるのが気がさすようになった。

彼女は時々自転車に乗って走っていた。尾道の街は極く狭くて、自転車で乗りこなすのは容易ではないのだ。そんな時には彼女はきっと家の用事で行ってるのだ。

私は自転車に乗れないので癪だった。

私はどことなく安子に圧迫を感じた。彼女は私よりしっかりしてる気がした。それが又私を彼女に引き付けた。

私は彼女には甘ったるい事が言えない気がした。同じ愛情を言い表わすにもテキパキした表現を用いねばならなかった。いわばテニスの球を打つようにして、彼女にぶっ突からねばならなかった。それが少なからず私の感情を鍛錬した。

けれども私たちは逢うと互いに楽しかった。

彼女はハワイの話をよくして聞かせた。

「ホノルルはとてもきれいな港よ。コーヒー畑で働いていたの。熱帯植物はきれいな花が咲くし、気候はいいし、日本人が沢山いてちっとも淋しくはないし……」

と彼女は懐かしそうに話した。それはエキゾチックではなくて、懐郷的であった。