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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

これは彼女に瀬戸内海の景色がホノルルのよりも美しいことを知らして、彼女の郷愁を解消させようと思って私が誘ったのであった。

私たちは彼女と彼女の兄と三人が出かけて山に登った。

高度はさ程でないが、坂はなかなか急であった。私は初めは威勢よく歩いていたが、段々疲れて息切れがして来た。彼女は靴で岩伝いに敏捷に歩いて元気であった。彼女の兄はまたがっしりと粘り強く余裕綽々として見えた。

「あんたは健脚だね」

と私が言うと、安子は息切れしてる私を見て笑いながら、

「ホノルルは高い火山脈があって、登りなれてるもの」

と言って、疲れを見せなかった。

絶頂に辿りついた時には私には気分が悪く吐気を催して、しばらくは景色を見る気もしなかった。

「存外弱脚だわね」

と彼女は私をからかって、美しい狐のような軽い脛付きで岩の上にひょいひょい登って、景色を見晴らしていた。

テニス、自転車、登山、彼女はスポーツでは私より一歩上だった。

負けじたましいの私は内心ひどく屈辱を感じた。

私は体を練らねばならぬ。

私は心にこう誓っていた。ところがそれから十日たたぬうちに「御所」のグランドで福山中学と尾道商業との野球の試合があった。