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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

制服を着て家へ着くと、母がお父さんは墓参をしているというので直ぐその足で墓地へ行って見た。

父は先祖からの墓地を竹箒を持って掃除していた。

「お父さん一寸休みで帰りました」

「ああ、帰ったか」

と父は慈しみあふれる顔をした。

「お父さんお願いがあるのです。僕中学を出たら東京の学校へやって下さい」

父の顔が急に憂いに変った。

「友だちはどんどん上の学校へ行くのです。僕だけ行かないではいられません」

「家の商売を継ぐのにこの上学問は要らないからな」

「僕は商業はいやです。やる気になれません」

父は渋面をつくった。

「お前は長男だ。商売を止めると言っても容易ではない。得意先もあるし、品物も山程あるし」

「商売は姉さんにやって貰って下さい」

「お前は何になるのだ」

「僕は哲学者になりたいのです」

「哲学者?」

と父は目をまろくした。「哲学者というのはどんな事をするのだ」

「人生の真理を探求するのです」

「つまりどんな人になるのだ、言って見れば」

「まあ、高山樗牛とか、大西祝とか言ったような人です」

「ふうーむ」

と父は考えに沈んだ。

「お父さん、お願いです。上の学校へやって下さい。僕は商売にはまるで向きません。