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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

私が五つの秋、二つ年下の妹重子が、五里はなれた三次という町の叔母の家へ養女に貰われて行った。もとよりそんな事情は後になって知ったのだ。その時は子守に連れられて、車に乗って行く妹を店の格子にすがって私は見送った。幼なごころに何とも言えない淋しい気がした。それから私は毎日毎日妹の帰って来るのを待った。やはり格子にすがって、妹の去った道の方を帰って来はせぬかと、長く見て立っていた。しかし妹は帰って来なかった。これが私が幼な心に哀別というものを知った初めだ。私はウロ覚えに、母が三次から帰った子守と話していた会話の一節を覚えている。それは叔母の家の直ぐ後には、綺麗な川が流れているということ。重子は初めは家へ帰ると言って泣いたが、なれた子守がついているのと、叔母夫婦がとても可愛がるので、なついて忘れて来たこと。重子を置いて、かくれるようにして、帰って来るのは辛かったことなど。

私は幼なごころにその川を心に描き、今はちがった家で遊んでいる、帰って来ぬ妹のことを思ってひとりで泣いた。その悲しみはハッキリ覚えている。

重子を養女にやったわけは、私の父母には子供が七人あり、私の外は女の児ばかりで、どうせ他家へ嫁にやらねばならぬのなら、子供のない叔母が是非にと欲しがるので、物心のつかぬうちにと養女にやったのであった。