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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
私はも一度その時のうつし身のままの姉に逢えるものなら、この世のどんな快楽を犠牲にしてもいいとさえ思う。
それから庄原へ帰って、秋の新学期が始まると直ぐに、伝市という先代から出入りの男が授業時間に私を呼びに来た。
「若いお郷さんがいけません」
私は田圃道を伝市と走りながら、あわてて訊いた。
「姉さん、どうしたの? よっぽど悪いの」
すると伝市は急に顔をしかめて泣き顔になって、
「大てい、もういけますまい。お亡くなりになったでしょう」
私はびっくりした。その時は涙が出なかった。夢中で走り出した。家に帰るともう大勢人が集まっていた。
裏座敷で屏風のかげに、白い着物をかけられて、姉はもの言わぬむくろとなって横たわっていた。
心臓麻痺で急死したのだ。箪笥にすがって、夫の襦袢の襟を直しながら、そのまま頓死したのだ。
私はわっと泣き出した。まわりの者も皆泣き出した。母は私を抱いて、皆に言うように、
「百三が可愛いからのう」
と言って又泣いた。それで慰めるという意味だ。するとまわりのものが、「そうです。そうです」と皆言った。
父には町中敵というものはなかった。出入りの者、近所の者皆に好かれていた。