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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

どこの芸者衆の道中かと言われたりしてはお父さんだって冷汗が出るからな」

豊子姉もそれで折れて、私だけ連れて行くことになった。

私たちは西城川の川岸づたいの街道を俥をならべて走らせた。私は先きの俥にいたが、一、二町走っては後ろを振り向いて姉を見てニッコリ笑うと、その度毎に姉もニッコリ笑ってくれた。それを飽かずくり返したが、よく姉も対手になってくれたものだ。

雪子姉の夫は学校の先生をしていた。町で大事にされ、教え子たちがやって来た。豊子姉は自分でどんどん御馳走をしてもてなした。自分の家ででもあるように。小さい娘たちも大勢来た。その中の美しい「すみえ」という子に姉はからかって、

「うちの百三の嫁さんになって下さい」

と言った。「すみえさん」は真赤になった。「花束を西城川に投げたまえ」と後に書きおくったのはこの娘だ。

私たちは渓流に山の迫った西城の景色をよろこんだ。雪子姉の借家は川にすぐ臨んでいた。姉たちと山で私ははじめて珠数花(まんじゅしゃげ)を手折った。私は今でも真紅なまんじゅしゃげを手に持って、川の見える崖道を、華やかに笑いながら、ハンカチを手にして少し婀娜っぽく、その花にまけず美しく見えた豊子姉の姿が忘れられない。