轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いりえのほとり

入江のほとり

正宗 白鳥

「太陽」1915(大正4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,430 字 · 50 页

青空文庫

「明日のうちに立とう」と、栄一はきゅうに決めたが、ひそかにそれを喜んだのは、辰男だった。明日の晩から、何時までランプを点けていようとも、もはや苦情を言う者はなくなるのである。彼れの英語の発音を試験したり、彼れの英文について無慈悲な批評を下したりしたがるそぶりを見せて驚かす者がなくなるのだ。……辰男はこのごろ英字に親しめなくなって、ややもすると心が外へ散って、寂しいつまらない気持がしだしたのを、兄のせいと思っていた。

「この書物を読んでしまったからお前にやろう。荷物はなるべく軽くしときたいから」と、出立の前の夜、栄一は弟のテーブルの上に英書を二冊置いて行った。

辰男は表題と著者の名前とを見詰めたが、読方をも意味をも判じかねた。そして知らない文字に攻められるのが恐ろしさに、内部をば開けてみないで、手馴れている自分の書物で蔽うて机の片隅へ押遣った。

今夜一晩と極ったため、階下の炬燵には皆なが集まった。珍らしく親爺も加わって何かしら話が賑っていたが、辰男一人は相変らず、二階にじっとしている。書きかけの英作文にも取りとめのない疑いのみしきりに起って容易に書続けられなかったので、懐手をしてぼんやり、風に唸いている障子を見ていた。