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しょや

初夜

山本 周五郎

「週刊朝日春季増刊号」朝日新聞社、1954(昭和29)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,384 字 · 35 页

青空文庫

反抗された場合にどうするか、その点が心配でおちつかないようにみえた。

「警護の者を伴れていってはどうでしょうか」

長廊下をさがる途中で、佐藤喜十郎がそう云った。藤也はすぐに賛成しかけたが、代二郎はあたまからはねつけた。

「気の立った者が集まっているところへ、警護の人数など伴れてゆけば衝突が起こるに定っている、とんでもないことです」

代二郎はかれらに供を伴れることも許さず、「上使」の作法どおり、大目付の者五人の供立てで除村家へ向った。

除村の家は馬場下の角地にあった。辻町の通りを大馬場につき当った右の角で、こちらに倉沢重太夫という納戸奉行の屋敷があり、片方は小者長屋になっていた。倉沢家は門を閉めていたし、小者長屋もひっそりと鎮まって、道にも人の姿は見えなかった。……除村では門をいっぱいに開き、青竹のそいだもので矢来を結いまわして、門内には水を張った手桶が、幾十となく並べてあり、また夜戦に備えるためだろう、ところどころに松明を組んで立ててあるのが見えた。

大目付の者は門からずっと離れた処に待たせ、かれらは三人だけで屋敷の中へ入っていった。玄関の前に七八人、小具足を着けた若侍たちがいて、三人を見ると(刀をひきそばめながら)前へ立ち塞がった。