轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しょや

初夜

山本 周五郎

「週刊朝日春季増刊号」朝日新聞社、1954(昭和29)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,384 字 · 35 页

青空文庫

――代二郎は居間へ戻った、家扶の小泉専之丞や、三人の若い家士たちが、脇の間で不安そうに坐っているのが見えた。久良馬の話を聞いたのだろう、久良馬の声は高かったし、その調子も平常とは違っていたから、母の茂登女も聞いたとみえ、代二郎が居間へ入るのを追って来た。

代二郎は机の前に坐った。その部屋は六帖で、北側に窓がある。机はその窓に向っているので、あけてある障子の外に庭の一部が見える。隣りは空地を隔てて御竹蔵があるが、庭の樹立が繁っているので蔵は見えない。三本ある古い桜の木が、窓の近くまで枝を伸ばしていて、その枝にはふくらんで色づいた蕾がびっしりと着き、一と枝だけはすでに咲き始めていた。

「大変なことになりましたね」

茂登女は代二郎の脇へ坐った。代二郎は黙っていた。

「どうなさる」と茂登女が云った、「――すぐにいらっしゃるのでしょう」

代二郎は「さあ」といって、母とは反対の方へゆっくりと振向いた。床間には「碧山雲層層」と書いた軸が懸っている、その下に香炉が一つ。ほかにはなにもない、その軸は玉林寺の住職で、亡父唯右衛門と親しかった浣石和尚の書いたものであった。