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はつつぼみ

初蕾

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,525 字 · 35 页

青空文庫

……じっさいうめには欠点が多かった、寝るときに脱いだ着物をそのまままるめておくし、少し急ぐとひっ掛け帯で歩きまわる、お乳に障るから化粧は控えるようにと云っても、忘れるとすぐ臙脂や白粉をつける、肌着もなかなか脱ぎ替えない、足袋は裏の黒くなるまではく、児が泣いたりぐずったりすると、時間に構わず乳を含ませる、添乳をしたまま寝たがる、とりあげて云えば眼につくことばかりで、なるほどこれでは婚家ともうまくいかなかったであろうとうなずけた。……しかし唯一つ、赤児の世話だけは親身になってした。どこがどうと云えないところによく気がまわる、虫気で寝そびれる夜が続くとき、風邪けで具合の悪いときなど、背負ったまま幾夜か寝ずにいて厭な顔もしない、その点がはま女の気持をひきつけた。――子供にさえよくして呉れれば、あとは少しずつ根気で教えていってもよい、そう考えるようになったのである。

はま女の努力がなまやさしいものでなかったのと同様に、うめにとってもそれは辛抱を要することだった。十九という年になってから、まるで違う生活のなかにはいったのである、しかもそれが規矩のきちんとした、作法の厳しい武家となると、こまかい習慣の差はもちろん、心がまえまで変えなければならない、それが日常瑣末なことに多いので、面倒くさいと思うともう手も足も出なくなる