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けしょうのもの

化生のもの

豊島 与志雄

「世界」1950(昭和25)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,086 字 · 27 页

青空文庫

なにか、お気になることがありましたら、あの学校の担任教師に聞いてあげましょうか。」

浅野が勤めてる学校は、哲夫が通学してる学校とは別なのである。

「あなたがそう御覧なさるなら、それでもう結構なんですの。わたしが充分に面倒もみてやれませんので、どうかと思いましてね。なにしろ、田舎から預ってる子なものですから……。」

「然し、あなたによくなついてるし、あなたもたいへん可愛がっていらっしゃるし、それだけでもう充分ですよ。」

美枝子は眼でちらと笑った。青いような感じのする黒目である。

「でも、わたしにへんな噂でもたったりすると、いけませんわね。」

浅野が返事に迷っていると、美枝子はまた眼で笑った。

「あなたは、先日、わたしにへんな噂がたってると仰言ったわね。どんな噂でしょう。」

「では、なんにも御存じないんですか。」

「いいえ。」

こんどは、彼女はほんとに頬笑んでいた。

「勿論、ばかばかしいことです。あなたに恋人が出来たとか、どうとか……。」

浅野はぱっと顔を赤らめた。

「まあ、そんなことですの。それから……。」

浅野は俯向いて、黙っていた。

「それだけですの、噂というのは。