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はんしちざっかん

半七雑感

国枝 史郎

「新青年 新春増刊号」1926(大正15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,946 字 · 6 页

青空文庫

一

一

岡本綺堂氏の「半七捕物帳」その主人公の半七に就いて些私見を述べることにする。

「……三十二三の痩ぎすの男で、縞の着物に縞の羽織を着て誰の眼にも生地の堅気とみえる町人風であった。色の浅黒い鼻の高い、芸人か何ぞのように表情に富んだ眼を有っているのが、彼の細長い顔の著るしい特徴であった」

働き盛りの半七といえば、こんなような風貌を持ってたらしい。

「しかしこんな稼業の者にはめずらしい正直な淡泊した江戸児風の男で、御用を嵩に着て弱い者を虐めるなどという悪い噂は曾て聞いたことがなかった。彼は誰に対しても親切な男であった」

こういう性質の男であった。いかにも小説の主人公らしい洒落れていて敏感で親切で、うっかりすると毒婦などには、思い込まれそうな岡っ引なのであった。

最初に手柄を現わしたのは、彼の十九歳の時であった。「石燈籠」と云われる所の、殺人、強盗、誘拐事件で、最初の好運に見舞われた。雪を冠いた石燈籠の笠に、うっすり付いていた足跡に由って犯人の素性を知ったのであった。だが何うも此発見、少々眉唾物である。ひどくバタの匂いがする。西洋流の探索である。ははァ偖は神田の半七、ドイルの探偵物でも読んだかな? などと疑問点を打ち度くなる。