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はんしちざっかん

半七雑感

国枝 史郎

「新青年 新春増刊号」1926(大正15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,946 字 · 6 页

青空文庫

二

あたりめえよ。いくら新宿を傍に控えているからと云って、今時の場末の稽古師匠が毎日店屋物を取ったり、刺身を食ったり、そんな贅沢が出来る筈がねえ。可愛い男が忍ばしてあるから、巾着の底を掃いて精々のご馳走をしているんだ」――そこで師匠の家へ行き、戸棚から犯人を引き出すのであった。これは如何にも日本的で、そうして充分合理的である。

大方の岡っ引は功に焦り、努めて罪人を出そうとする。然るに半七はそうで無かった。彼には血もあれば涙もあった。彼は好個の紳士なのであった。この点ホルムスと似通っている。「勘平の死」の事件では、わざと犯人を自滅させ、和泉屋という大老舗に、成るべく迷惑をかけないようにした。「帯取の池」の事件でも、これを表向きにする時は、千次郎という若者は、お叱りの上町預け、これ位いの罪にはなるのであったがさっさっと見遁して了うのであった。だから時々犯人などから、お礼の言葉を受けることがあった。

二

半七と雖も恫喝はした。高飛車に出て嚇すことがあった。

「……それで世の中が無事息災に通って行かれりゃァ、闇夜にぶら提灯は要らねえ理窟だが、どうも然うばかりは行かねえ。