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はんのすけしゅうげん

半之助祝言

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页

青空文庫

半之助はぎょっとし、初めて自分の立場に気づいて、あいそ笑いをしながら手を振った。

「いやべつに、なんでもないです、どうぞ気にしないで下さい、ほんのちょっとした者なんですから」

「ちょっとした者とはなんだ、いったいどこから来たんだ」

「あちらです、あちらの」半之助はうしろさがりにそろそろと退却しながら、「――あの折戸があいていたものですから、お庭もきれいでしたし、鯉もいるし、貴方は失礼ですが、その、鯉の方面では専門家でいらっしゃるらしいですな」

だいたい距離はいいらしい、半之助はもういちどあいそ笑いをし、向き直って、木戸のほうへ悠然とたち去った。

「おうへいな口をきく爺いだ」

外へ出ると、彼はこう呟いた。

「猛犬みたような顔をして、こんなふうな眼つきで、おまえはなに者だなんて、……たぶん庭番の元締めかなにかだろうが、ふざけた爺いだ」

中一日おいて、玄武社の連中が誘いにやって来た。それは埴谷城代のむちゃな治績を、実地に当って説明するのだそうで、まず初めに竜神川の堤防へ伴れてゆかれた。

そこは城下町の東北一里ばかりの処にあり、きわめて諧謔的な、自然を揶揄するかのような景観を呈していた。