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はんのすけしゅうげん
半之助祝言
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页
仲木小助がしゃがれ声で叫んだ。
「――町筋改修は歴史的大事業、百姓町人は虫けら同然と云ったろうが」
「しかもわれわれを無知無学、ばかで盲人で近眼で、女の腐ったのとぬかしたではないか」
「ええ面倒だ、抜け」
没頭弥九郎が刀の柄に手をかけて呶号した。
「――きさまはわれわれを侮辱し、一藩の信頼を裏切った、玄武社としては断じて赦すことができん、制裁を加えてやるから抜け」
半之助は頷いた。頷いて答えた。
「わかった、諸兄は剛健の気に昂奮しているらしいから、弁解をしてもむだだろう。しかしこんな処で勝負はできまい」
「逃げを打ってもその手は食わんぞ」
「笑わしてはいけない」半之助は眼の前にいる弥九郎の胸のあたりを見ながら、にこっと笑って云った。
「――おまえたちの十五人や二十人、こう見えてもおれは江戸では」
そう云いかけて、突然「えい!」と叫んだ。叫んだと同時に彼の手が閃めき、ぱちんと刀の鍔が鳴った。みんなあっと息をのみ、弥九郎はうしろへとび退った。……半之助は微笑しながら、弥九郎の胸を指さして云った。
「おまえの着物の衿を見ろ」
弥九郎はそこへ手をやった。前衿の縫い目が切れてぱくぱくしている。