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はんのすけしゅうげん

半之助祝言

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页

青空文庫

要するに蓋藩の力を集結しても、とうてい敵し難い人物であった。それがたかだか四万三千石の城代家老。世は泰平。その程度の藩政ならばかでもこけでもやってゆける。

――なにもそれほどの人物の出る幕ではないじゃないか。

こう思うかもしれない。しかし城代家老は少なく見積っても城代家老である、その席にいれば多少の慰安がないわけではない。すなわち埴谷城代の施政方針は、おおむねその方面から執行されて来た。

その内もっとも藩の問題となり、領民からも不平を買った例を、参考のために書き抜いてみよう。

一、竜神川の堤防工事。

一、城下町筋の区劃整理。

一、外壕埋立とその耕作制度。

資料には他に十数件あるが、右の三例が彼の性格と好みをよく表わしているので、ここにはこれだけを紹介しておく。

「おわかりでしょうな、か、呆れた連中だ」

半之助は歩きながらまた独り言を云った。むろん笙子嬢を恐れる玄武社幹部に対する感想であろう。続いて彼はふんと鼻で笑い、見そこなっちゃいけねえ、などと呟いた。

風のない暖かな、いい午後だった。

半之助は城の大手へ出て、埋立てた外壕沿いに、三の丸のほうへと、ぶらぶら歩いていった。