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なんきんむしさつじんじけん

南京虫殺人事件

坂口 安吾

「キング 第二九巻第五号」1953(昭和28)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,660 字 · 26 页

青空文庫

たぶん犯人はハンドバッグの中にあった南京虫だけ盗み取って行ったらしい。

「すると比留目奈々子がミス南京だったのか。なるほど、死顔ですらも、思わず身ぶるいが走って抱きつきたくなるような美人だねえ」

「香港から飛行機で送られてくるカンヅメのうち約三分の一が本物の果汁で、他の三分の二が南京虫というわけか」

「犯人がボストンバッグをぶらさげてきた謎が、それで解けるわけだな」

そこで羽田の税関はじめ関係局の配達夫等にまで調査をすすめてみると、この荷物が奈々子のもとへ送られてきたのは当日の午前中のことだ。ところが、それ以前にも、約四ヵ月前から合計五度にわたって同じような荷物が香港から届いているのが分った。

しかし、波川巡査はまだなんとなく解せないことがあった。

「自分が思わず立ち止ったとき、奈々子の叫んだ言葉というのは、こうなんです。小包……そんなもの知らないわよ……脅迫するのね。――ざッとこんな意味でしたよ」

「つまり犯人が南京虫の到着を知って取りに来たから、そんな小包はまだ来ていないとゴマカしたのだろう。それがそもそも奈々子の殺された原因さ」

云われてみれば、ピタリとツジツマが合うようだ。