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なんきんむしさつじんじけん
南京虫殺人事件
「キング 第二九巻第五号」1953(昭和28)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,660 字 · 26 页
父の推理
政府や他の勢力がひそかにそれを奨励しているような密輸だって、あるかも知れないのよ」
「すみません」
「いいのよ。それで、もしも父がそうなら、それから、どうなの?」
「もう、いいんです」
百合子は口を押えて、ふきだしたいのを堪えながら、立上った。
「また変なことお訊きに伺うかも知れませんけど、会って下さいますか」
「ええ、ええ。何度でも、いらッしゃい。お勤めの御用の時に限らずに、ね」
「ありがとう」
百合子はワクワクしながら、夢中で表へとびだした。
渋谷駅の方へ歩きかけると、後から呼びとめられた。父であった。
「心配だから、そッと様子をうかがっていたのさ。首尾はどうだい?」
「ウチへ帰って話すわ」
百合子は父の手をとって、子供の遠足のように大きくふりながら、上気して歩いていた。
父の推理
家へ戻って、百合子は陳邸での様子を父に物語った。
父はいかにも意外の顔で、百合子の話をきき終ったが、ふと淋しそうに云った。
「女はそういうものかなア」
「なアぜ?」
「お前のようなシッカリ者でも、ボオーッとなると、そんなになるのかということさ。だってなア。お前はえらい決心で出かけたはずじゃないか。