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なんきんむしさつじんじけん
南京虫殺人事件
「キング 第二九巻第五号」1953(昭和28)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,660 字 · 26 页
それは麻薬患者を探しだして、麻薬を餌に、密輸の荷物の仮の受取人に仕立てることです。奈々子さんはその受取人の一人だったのです。ところが、あの日、ひそかに荷物をあけて内容を知り、慾に目がくらんで荷物の到着を否定したのです。そのうち麻薬がきれかけて、私の同行者が、時々奈々子さんにそうしてあげたように注射してあげたのですが、彼は奈々子さんの変心によって、新しい密輸ルートの発覚を怖れるあまり、奈々子さんが無自覚のうちに多量の注射をうって殺してしまったのです」
令嬢はもう平静をとりもどしていた。そして、微笑すら浮べて語りつづけた。
「私は父の相棒をつとめて数億の金を握りましたが、父が今度日本へ戻ったら、父を殺すつもりでした。乱世ですから、私の心は鬼だったのです。お金をもうけて、復讐してやりたかったのです。私を苦しめた人にも、苦しめない人にも、とりわけ、父に復讐しなければならなかったのです。なぜなら、彼は父ではないからです。彼は私の良人なのです。私はお金で買われた内妻の一人です。そして私は日本人です」
令嬢はきつく力をこめて百合子の手を握りしめると立上った。そして、笑みかけた。