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なんきょくのかいじ

南極の怪事

押川 春浪

「中学世界」1905(明治38)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,508 字 · 33 页

青空文庫

しかるにフト心づけば、余の手に提げたる船燈は、もはや油尽きしものか、青き光ゆらゆらと昇って今にも消えんばかり、この船燈こそ船中に残る唯一の光にて、マッチのごときはことごとく湿りたりと覚えたれば、この火を消しては一大事と、余はあわて狼狽めき、慄う手に側の燈油を注ぎ入れて、辛くも火を消さずに済みたり、この火消えなば、余は実に暗中に煩悶して、暗中に死すべかりしなり。

火は以前より多少明るくなれり、されど火明るくなりしとて、余に希望の光微見えしにあらず、余は刻一刻死の場所に近づきつつあるなり、船は瞬間も休まず地球の果に向って走りつつあるなり、ああこの船の行着く先はいずくぞ、今は真珠の多く取れると云う絶島に流れ寄らんなどとは思いもよらず、地球の果には一大氷山ありと云う、その氷山こそが余の最期の場所ならん。

およそ二三十分して余はまた寒気にたえずなれり、今までの着物にてはとてもしのぶあたわず、余はその上にさらに数枚の毛布を重ねたり、毛布を重ねつつ耳を澄ませば、あら不思議! いままでは舷を敲くものはただ波の音のみなりしが、二三分以前より打ち寄する